なぜ予防重視のサークル活動なのか

なぜ予防重視のサークル活動なのか

自分の健康は、自分でつくり、護る

野口晴哉氏が教えてくれたとても大切なこと

野口晴哉氏はその著『愉気法Ⅰ』(全生社刊)のなかで、こういう趣旨のことを仰っています。以下は、その要点の抜粋です(ほんの少し文の並び等、入れ替えたりしています)。実は私たちの施療所では、この文章を「健康について」と題し、額に入れ、玄関に掲げ、施療に訪れる人々の目に触れようにもし、私たちも時々見ては、けっして忘れることのないよう、心に刻んでいます。

健康について

 人間を救う薬は、人間が既に持っている。補ったりする前に、自分の体に、その必要とする薬の製造を命じなければならない
 人間自身が丈夫にならなければ丈夫とはいえない。自分の力が満ちて、自分の力で丈夫を保っていることだけが健康であるのだ

 人間が弱かったり、病気になったりすることを何かの所為(せい)にする考え方を改めて、自分が弱いからそれを教えられたのだと、素直に自分の所為にして、そこから吾々の生きる道を出発させたい

 「べし」「べからず」を多くして生きる範囲を狭めることは決して養生ではない。活き活きと生き切ることだけをもって養生とせねばならぬ。本当の元気を喚起して、徹底的に強くなる決心をして生きねばならぬ

 病菌を殺すのではない、体を活かすのである。体自身の力で病気を処理せしむるのである。病気は怖いものではなく、人間の体を新しく強くし、むしろ生きている上の安全弁となる。病気を経過することそれ自体、病気以前より体が強くなったことを物語る。それ故、病後は却って新しい体を獲得できるのである
                          (野口晴哉)

人は、自らを救う薬を既に持っている!

この文章を読むと、いつも胸が熱くなり、勇気が湧いてきます。そう! 人間は、自らを救う薬を既に持っているのです! 人間自身が丈夫になって、自分の力が満ちて、自分の力で丈夫を保っていることだけが健康なのです! どこかが悪くなったから、病院に行く。薬をもらって、飲む。あるいは、施療所に行って、つらいところをほぐしてもらう。ひとまず症状が収まれば、とりあえずはそれでよし、としてお茶をにごす。ところが、なぜ、そうした症状が出てきたか、その原因を突き詰めて自分自身で根本的なところに対応していかないと、往々にしてまた症状がぶりかえす、形を変えて現われる。で、その対処策に追われる……。こんな繰り返しになりがちなのではないでしょうか。

自分自身を新しく、強くしていく!

そうではなくて、自分自身が本当の元気を喚起して、徹底的に強くなる決心をして生きなけれならない、のです。不幸にして病気になったとしても、それを自らを見直すきっかけとして、自分自身を新しく、強くしていかなければならないのです。自分自身が、既に内奥にもっている癒しの力を発揮して、自らを作り変えていかなければなりません。自分にはそんな力はないと、はなから放り投げ、他人任せにする、というやり方は、やはり避けたほうがいいと思います。

大切なのは、自分の健康は自分でつくり、護るという心構え

私の経験をもとにお話ししてみますと、こんなことがありました。いずれも、施療所内でのことではなく、外部に居て、私がこういう仕事をしていることを知って、困りごとをお話しされた、という状況下でのことです。

手がしびれて、指を動かせない……

朝、手がしびれてしまって、指を動かせない。困っている。これでは、料理も、洗濯も、掃除もできそうにない。どうしたものだろうか。ある主婦の訴えです。

見ると、確かに指がこわばっています。そこで、試しに首にさわってみました。すると、微かに異常が感じられる箇所があります。そこで、その部位をさすり、軽く触れていたところ、アレッ、指が楽になった。ワッ、動き出した。エ~、なぜ??? とビックリされるということがありました。5分ぐらいの出来事です。

これには、私のほうも実は驚いたのですが、ただ、なぜ首に手をあてたかというと、手の指の神経は首から出ているからです。それだけのことです。私にあって彼女になかったものは、解剖学の知識だけです。もし、彼女に解剖学の知識があり、手の指の神経が首からきているということを知っていたら、あるいは自分で首をさわり、解決できていたことかもしれないのです。

腰が痛くてたまらない……

もう一つ、男性の例を紹介します。ある会合で男性の方が腰に手を当てて、しかめっ面をされていました。どうされましたか、と聞くと、腰痛持ちで定期的にブロック注射をしに病院に行っているのだが、今日はやけに痛みがひどくて……。

見かねて、とりあえず簡便な方法があるので、痛みが取れるかどうかはわからないけれど、やってみますかと水を向けると、やってみる、との返事です。

で、何をしたかというと、体を動かしてもらって、どういう方向へひねると痛いのか、どういう方向なら痛くないのか、それを軽くやってもらい、痛くないほうに10回、20回と体を動かしてもらいました。

すると、アレッ、腰が楽になった、エ~、なぜだ~???と怪訝な表情です。これまで注射頼みだったのが、簡単な運動でひとまず楽になったのですから、驚かれるのも無理はありません。

しかし、これも、筋肉等の習性を少し勉強されると、必ずしも不思議なことではなく、十分あり得る話なのです。そういうことを知っていれば、病院や施療所に行かずとも、自分で十分に対応できるかもしれないのです。時間は、十数分間ぐらいではなかったでしょうか。

こんな話をすると、信じる人もいれば、まったく信じてもらえない人もいて、反応が分かれるのですが、私が言いたいのは、人間の体って、やはりすごい力をもっていて、それを上手に用いると、素朴なやり方でも、結構効果が上がるんだ、ということです。

日頃から体を動かし、バランスを整え、病気や不調を寄せつけないようにする

緊急性や病気の種類にもよりますが、ちょっとしたことなら、お医者さんやお薬、施療所に丸投げしなくとも、その前に、自分でちょっとやってみる、創意工夫してみることがもっともっとあってもいいのではないでしょうか。そうすれば、過剰な投薬や手術などによって、かえって人体が自然にもつ良能反応を歪め、抑えつけることにもならないでしょう。高騰を続ける医療費の抑制にもつながるでしょう。

もちろん、そのためには、解剖学や生理学など体のメカニズムについても、ある程度学ぶ必要があるでしょう。そして、もっといいのは、やはり人間の心と体の成り立ちというものを知っておいて、日頃から体を動かし、バランスを整え、病気や不調を寄せつけないようにすること。自分の健康は自分でつくり、護るという心構えではないか、と思うのです。

対症療法頼みでなく、自分で責任をもつ!

先の二つの例では、たまたま期せずして好結果に結びついたのですが、実は、どちらも全身を調べてみてのアプローチではありませんでした。いわば対症療法に近い形で、〝試して”みたのに過ぎません。もし、原因がどこか別にあったとすれば――たとえば、体の使い癖とか普段の姿勢の悪さとか生活習慣の問題とか――先ほどの効果も、どこまで持続性があるかはわかりません。当座をやりすごしたから、それでいい、とするのではなく、症状を引き起こしている原因をやはりきちんと探り、見直し、改めていかないと、本当の健康は、なかなか得られないと思います。自分の体は自分で責任をもち、健康になる。そういう習慣を、一緒になって、ぜひ根づかせていきたいのです。

心や体のメカニズムについて勉強する場としてのサークル活動

だからこそ、私たちは、定期的に体を動かし、心や体のメカニズムについて勉強する、そんな場としてのサークル活動を、まずはしっかりとやっていきたいと考えました。

そして、そうはいってもなかなか自分の手には負えない身心の不調があるとすれば、それらについては、自然治癒力がうまく働くよう、できるだけのお手伝いをしたいと思ったのです。そして、施療にあたっても、ただお困りの症状が消えればいい、というのではなく、その機序(成り立ち)についても私たちなりにわかる範囲で明らかにし、それを説明し、アフターケアの一環として、再発防止のためのアドバイス等もしっかりやっていきたい。そういうやり方がいいのではないか、と思ったのです。

新たなホームページとブログづくり

幾人かの人に、いろいろ聞かれるなかで、そんな話をしていたところ、是非それはホームページに載せて、発信したほうがいい、と背中を押されました。それが、いまのこの和楽院のホームページと姉妹ブログにつながったわけです。ブログというスタイルを今回、採り入れたのは、2010年からあるニコニコ太一気功のホームページと、新しい和楽院のホームページを、私たちがやりたいと思っている「気功的生活」というテーマのもとに、できるだけカジュアルな形でつなげていくのがいいのではないかと判断したからです。サイトを増やした分、制作にはいささかパワーを必要としますが、あまり無理をせず、楽しみながらやっていければ、と思っていますので、よろしくお願いします。

自然治癒力とはナニ?

ところで、つい今しがた、自然治癒力という言葉を使いました。治療や施療の分野では、もはや当り前のようによく使われる言葉なのですが、では実際のところ、自然治癒力とはいったい何なのかと、となると、どこかわかったようなわからないようなところがあります。あなたは如何でしょうか。まさか、自然に放っておけば、そのうち治癒力が働いて、なんでも良くなる、ということでは、やはりないでしょう。自然治癒力が働くには、それにふさわしい条件というものがあるのではないでしょうか。この辺のことについて、次の項で考えてみたいと思います。

⇒ 自然治癒力とは何か